2019/02/27
こんにちは、よっしーです。みなさんは、1日が終わり寝室でゆっくり寝ていたら、そこを電車が走り抜けたというような経験をしたことがあるでしょうか。
電車というよりは、ちょっとした貨物列車ですが、アメリカの長い貨物列車ですよ。ときに180両ぐらいあったりします。でも、1日頑張った後、ベッドに入って、ゆったりと休んでいたら、船のコンテナから荷物を積み変えたような貨物列車1台がみなさんのベッドルームを通り抜けたことってあるでしょうか。
まずもって、経験したことはないし、そういうニュースを聞くこともないはずです。ただ、アメリカの貨物列車は少し変わっていて、たまに、脱線することがあるんですね。たまにね。
今日は、ちょっとその辺の話を取り上げたいと思います。
1 小さな町で起きたモーニングコール
みなさん、今回のニュースの内容はシンプルです。アメリカのジョージア州で貨物列車が脱線して、民家に飛び込みましたというものです。
1文で書くと、さらッとしていますが…でも、想像してみてくださいね。たとえになりますが、ベッドをわざわざ線路の上に持ってきて、すやすや寝る人っていないと思うんです。
もちろん、そんなことする人はいませんが、いいたいことはイメージを持ってほしいということです。ベッドの上を列車が走り抜ける。それって、まず、無事ではすまないだろうし、貨物会社とその人のどちらに問題があるかは明白です。
ところが、ある日の真夜中3時、家のベッドで寝ていた人のもとに、ちょっとしたことが起こります。今回は、わざわざ貨物列車の方が民家の方に訪れてくれたんですね。
CSXという大会社の貨物列車が脱線し、線路わきにあった民家に貨物列車が飛び込むことになります。その内容を確認していきましょう。
でも、その前に…
2 たぶん、このニュースの取り扱いは現地では大きくない
話からは脱線してしまいますが、このニュースは現地アメリカではマイナーだと思っています。少なくとも、日本では、2017年10月8日の現時点で、これを取り上げている報道はないはずです。
もし、こういったニュースが日本の鉄道会社で起きたのなら、結構大きく取り上げられると思うのですが、アメリカのニュースということもあり、僕は脱線が起こった当日には気がつきませんでした。
実際、日本語で「CSX 脱線」とかで検索しても全くでてきません。
じゃあ、どうやって知ったの?といったら、自分のブログです。過去に書いた記事がどれだけ読まれているかって、読む人が急に増えると書いている人にもわかるのですが、
10月7日から、CSXの過去に書いたマイナー記事がちょっと読まれています。ちなみに、ここでは、CSXの前回の脱線事故や、それをもとにしたサスペンス映画の話、そして、CSXがどういった会社なのかの説明もしていますので、よかったら見てみてください。
ここ最近10人ぐらい読んでくれているのですが、意外なことに、このブログ、アメリカから読んでくれる人がいたりします。Google Analystics(グーグルアナリティクス)という、ブログのアクセス数とかを知るツールがあるのですが、
結構、アメリカのフロリダ州(ハリケーン「イルマ」のことを書いたので)とか、理由はわからないのですが、テキサス州の人とかで読んでくれている人がいるというのがわかります。あくまでも大雑把な属性で、もちろん個人はわからないんですけどね。
当然、急に読まれているので、現地でなにかニュースがでているのかなと思ってみたら、あらたに、フロリダ州のすぐ上のジョージア州アトランタで脱線事故が起こっていますといったことがわかりました。
3 不思議なモーニングコール
(1)状況の確認
でも、実際に見てみましょうか。FOXニュース アトランタから引用したいと思います。
画面が見えますか、これはドローンから撮った画像のようです。貨物列車が脱線し、民家に突き刺さっているような絵が見えていますよね。
現場としては、こんな感じです。アンドリューストリートの道沿いに貨物列車14台が脱線し、そのうちの5台は完全に道路にのり上げ、内、1台は民家に衝突したといっています。
では、その民家に衝突した1台はどうなったでしょうか。
これですね。1台は、家にぶつかり、中で寝ていた男性のベッドルームを通り抜けたといっています。
そして、こちらは逆側です。キッチンがあるところで、列車が家にあたり、家の基礎部分のところにダメージを負っていますとのアナウンスが流れます。自分の家にこんなことが起こったらほんとにショッキングですよね。
上からの写真が、また流されます。電車がジグザグになっている一番下の、緑枠部分、家に突き刺さっていますよね。キッチンを抜けて、寝室まで入り抜けたということです。
ほんとに真夜中の3時に災難でしたね。
原因については、わかっていません。FOXもただ、現地の状況をドローンで伝えているだけです。
消防署もつげていますが、今回は、砂とか土とかを運んでいて、人体に危険な物質は積んでいなかったようです。
5時間かかって、列車とかをショベルカーで撤去したようですね。画面に列車の車輪が見えています。
(2)無事に起きることはできたか
奥さんですね。実は、寝室で寝ていたのは旦那さんで、そこに貨物列車が通過するのですが、骨折だけですんだようです。
画面にも書いてありますが、本当に奇跡ですよ。これ…他のニュースも聞くとわかるのですが、電車がけたたましい音で民家に衝突しているので、お隣さんが助けに入るのですが、
たまたま衝突した貨物列車が空で、その中に奇跡的にベッドごと入り込んだみたいなんですね。CSXって、大規模輸送を行っている会社で、前回は硫化系のガスや、プロパンガスなどを運んでいました。引火性のものであったり、爆発物、有害物などの危険物です。
ペンシルベニア州で起こっているのですが、火災が起きて、地元住民も10時間以上避難しています。
今回の男性は、朝の3時に、貨物列車がベッドルームに飛び込むという日本では聞いたこともないような、ものすごく不幸なことが起きました。なにも悪くないですよ。ただ、家で寝ていただけです。
そこに、大型の貨物列車が突っ込んだら、普通、言わずもがなですよ。でも、貨物列車が空で、砂や土とか人体に危険でないものを積んでいた。
しかも、ベッドにくるまれる形で、上手く潜り込んだので、何箇所かの骨折で済んだとの内容です。
(3)なぜ、モーニングコールをしたかはわからない
その後、見ていたら…ここ気になりました。
ニュースでは、原因はわからないといっています。でもね。さらっといっていますが、原因についてちょっとした推測はあるんでしょうね。たぶん、これですよ。
英語では、後方の重量ある車両が、前の貨物車両を押し出す形で脱線させているといった表現があります。これ、おそらくキーワードでしょうね。
原因にからんでいるはずです。
ちなみに、今回は、アメリカの東部で、ウエークロスから、シンシナティ行きの貨物列車で、事故はアトランタで起こっています。機関車3台に、後続190車両以上を運行させていたようです。
最後に、アナウンサーのガイダンスと、現地の住民のコメントですね。
CSXは調査中とのコメントしかだしていないようです。アメリカのやり方なのでわからないところがありますが、日本のように、会社として事故の原因を説明したり、記者会見として発表したりしません。
そして、みなさんにも、本当に機会があったら、CSX Derailmentと検索してみて欲しいです。明らかに多いですよ。日本でこれをやったら、この会社のように190年も操業できません。
でも、アメリカの大会社の強きもの…強き会社です。しかもアメリカの東側の貨物列車を2社でほぼ独占している寡占企業です。ものすごく力が強いんですね。
公共性が高い企業だけれども、それに対して、運輸当局も、現地報道も、住民もあまり、社会的に適切で妥当なな監視ができていません。また、不利な事実が出てきにくいんでしょうね。
動画でも、現地エリアに住み人は、色々な疑問を持っていますとかアナウンスされていますし、コメントしている人も、こういう事故は聞いたこともないし、なぜこういうことが起こったのか、今回は何が問題だったかわからないといっています。
不安ですよね。日常でおよそ起こりえないことが起きているといっています。CSXの線路沿線に住む人は、たぶん、思っていることあるはずなんですね。
だって、色々なところで脱線が起こっているのは現地の人は知っています。会社の力が強く、労働者をたくさん解雇するということも知っています。そして、貨物列車として、危険な化学物質などを運ぶことがあることも知っています。
だからこそ、「アンストッパブル」という映画が作られます。映画って、社会問題をよりわかりやすく知ってもらうために、エンターテインメントという切り口で提示することもあるんですね。
でも、誰もコントロールできません。そして、原因を調査しているといっても、情報があまりでてきません。また、何もなかったように、脱線した列車をショベルカーで移動させて、同じ運行をはじめます。
そして、数か月後には、また、180両編成の貨物列車が脱線・民家を破壊とか、炎上といったニュースを見るでしょう。住民としては、ここの沿線に住んでいて、不安に思わないわけがありません。
せめて、何が起きているかは知りたいはずです。
なにが起きているんだろう…?ほんとは、地元住民も報道も、なんでこんなことが起こるか知りたいはずです。
(4)事故原因の一部は想像できる
運輸当局の報告書を見ていると、事故原因は複数だとわかります。直接は、ヒューマンエラーが連鎖して、脱線に至っているのですが、大きな部分では、CSXという会社の「制度」の問題です。
想像できるところでは、貨物列車を安全に運航させるための、管理体制がよくないんですよ。もちろん、会社が情報をだしていないから、わからないですよ。
でもね。保守などにあまりコストや労力をさいている感じではなさそうですよね。たとえば、会社が、列車を安全に走らせるためにやる確認事項であったり、検査内容であったり、人間がミスしにくいような設計であったり、安全教育であったり、あまり、会社として、ヒューマンエラーを問題のないレベルにまで落とすための、改善活動が盛んなところではないんだろうなというのを想像させます。
報告の中で、現地の人がイメージしているのは、主に3つです。
日本で脱線というと、スピードを出し過ぎてカーブを曲がるということがイメージされますが、全体として直線が多く、速度も65マイル(90km程)なので、そこはメインではなさそうです。
でもね、メインの内容として、トリガーとなっているのは、まずブレーキです。ここが大きくかかわっていることは想像がつきます。
運輸当局(NTSB)が出している、前のペンシルベニア州の脱線火災の、初期レポート(詳細はでてこないのですが)から引用しますね。
https://www.ntsb.gov/investigations/AccidentReports/Pages/DCA17FR011-prelim-report.aspx
基本的には、①レールとしては下り坂になっていた。②貨物列車180車両がつながっているが、前方の車両は軽く、後ろの方の車両は重かった。だけれども、③後ろの方のブレーキは十分に効かなかった。ということが書かれています。※文章の下半分については積んでいた荷物の話になりますが。
こういったことが、たんたんと書いてあるだけなので、事故がどうやって起きたかのストーリーは、レポートには書いていません。
ただし、言いたいことは、おそらくこういうことだと思います。
「下り坂になっているところで、車両のスピードがそれぞれバラバラになって、ブレーキをかけたとところ車輪がロックし、レールを滑空した。その上、列車の前方は軽く、後方は重かった。そのため、後ろの重い車両部分が止まりきらず、前方の止まり気味にある車両につんのめる形で、脱線した」と。
まず、前提として、ブレーキには、鉄道会社の整備不良がありました。ブレーキの仕組みについては、説明がないのである程度推測しているところもありますが、
もともと、操縦席で、エアーブレーキをかけるやり方で、列車を止めていたはずです。エンジンの力で空気を送り、車輪にブレ―キをかけるシステムです。
ただし、今回運転士が2人いるのですが、もともと、整備不良の部分があって、後ろの方の車両20台のエアーブレーキに空気モレがあり、ブレーキが効いていないことはどちらの運転士も把握していました。
なので、どうしていたかというと、かけつけた整備エンジニアがエアーブレーキを直している間、(たぶん、各車両にレバーを引いてとめるような物理的な)ハンドブレーキがあるので、58車両分のハンドレバーを倒して、ブレーキをかけていました。
ここまでが説明の第一段目です。ちなみに、エアーブレーキは直るのですが、時間がかかったので、運転士1人は勤務時間終了ということで、帰社しています。
二人目の運転士は、エアーブレーキがまだ直っていない可能性もあるなと疑っている状況です(たぶん、ここは過去の整備の対応状況がよくなかったといった経験とかがあるのかもしれません)。
そのままでは、下り坂を進まなかったので、58台ハンドブレーキがかかっている前の方の25車両のハンドブレーキをに戻して、ブレーキがかかってない状態にします。
電車は下り坂を進み始めます。ところが、整備エンジニアと運転士はたぶん情報共有していません。エンジニアが修理したエアーブレーキをかけはじめます。エアーブレーキは一律にブレーキがかかるはずですが、
運転士が、ハンドブレーキをかけている車両(後方33台)と、かけていない車両(前方25台)があることに気がついていません。列車のスピード減速が20マイルから30マイル(32km-48km)とバラバラになっているので、おかしいなと思い始めます。
ダイナミックブレーキとかかれているのですが、内容がよくわかりません。おそらく、モーターとかで、直接補助ブレーキをかけるようなタイプだと思いますが、エアーブレーキを解除して、このダイナミックブレーキを3回試みて、機関車のスピードがバラバラになっているようなところをアジャストしようとしています。
ここで言っていることって、会社が列車の整備体制を十分につくっていないということと、安全運転をするために、事前に確認する手順書もないなということです。
まずは、運転士が先にエアーブレーキの空気モレに気がついているので、整備システムがうまくいっていないんだなとわかります。そして、エアーブレーキが効いてなくても、そのまま列車を走らせていますよね。
また、エアーブレーキを直したらやっぱり、手順書を見ながら、それぞれの機能について、指をさしながら動作確認をするべきだと思うんですね。
お互いの認識がずれているし、運転士とエンジニアとの間で情報連携が十分にされていないので、それぞれが各々ブレーキをかけはじめています。当然、各車両の、ブレーキの大きさも、機関車のスピードも、ある車両は早く、ある車両は遅くとバラバラになります。
また、レポートにのっているのですが、脱線した部分の車両を確認したところ、車輪の回転が止まり(ロックし)、そのままレールの上を滑走してしまった後を見つけています(フラットスポット)。
これは、おそらく車輪に対して、ブレーキの力が大きすぎるというか、急にブレーキをかけているはずなんですね。当然、ブレーキが効かず、車輪は滑空するので、とまれないことになります。
事故のあった場所の1.7マイル手前では、①レールが下り勾配(下り坂)となっていて、貨物列車全体としては、前の方に進む力が働いています。
そして、ここで、列車の後ろ部分が重かったことを書いています。前方:「先頭車両から35台目まで」が1631トン、後方:「36台目から続く143台」が16621トンとなっています。もちろん、列車の長さが1対4と、後半部分の台数は多いのですが、そうだとしても、後半部の列車は全体として2.5倍程の重さの車両が続いていたということです。
なので、ブレーキの効きのわるい、後続車両が前を押すはずです。レポートでは書いていませんが、おそらく、こういったストーリーを想定しているのかなと思います。
これは、前回の原因(ペンシルベニア州の脱線・炎上の初期報告)なので、今回のジョージア州の寝室に貨物列車が突っ込んだことの説明ではないのですが、前回の事例においても、CSXという会社にて、ちょとした「システム」をもうけて、人間のヒューマンエラーが連鎖することを防いでいく「仕組み」がないということに気がつきます。
おそらく、列車の運転で確認することを、手順書やフローで作っていないなというのがわかります。列車の整備についてもしかりです。あと、この列車の作り(設計)もわかりにくいんでしょうね。おそらく、ヒューマンフレンドリーじゃないはずです。
ミスがでにくい操作方法にすればいいのに…て感じてしまいます。
CSXは、説明をしていないので、実際に、今回の事故の内容でネックになっている具体的な部分はわからないですが、でも、おそらくベースはこういったことのはずです。
直接的なものとしては、列車の重さがバラバラということと、とくに、ブレーキシステムです。
おそらく、ブレーキの内容が(下り坂の場合とか、不具合がでた場合とか)色々なケースごとに考えることが多すぎて難しすぎるんですよ。
もっと、だれでもわかるような簡単な作り(設計)にする必要があるはずです。そういう意味では、あまり、個々の社員の経験知にまかせていて、専門性というか、判断基準がバラバラになるのもよくなくて、できるだけ列車を安全に走らせるための、フローという目で見えるものを整備した方がいいのかなって思いました。
実際に運転士も、エアーブレーキが本当に直っているかどうか、疑っているわけでしょ。運転士の中では普段から直ってないなという認識のはずなんです。本当は、復旧手順書の中で、それぞれの手順を2人で確認できるような「目で見える化」のマニュアルがあるといいのかなというのを感じさせます。
なので、そういった経験知を言葉に落とし込んで、改善するような部署や、制度がおそらく必要なんでしょうね。
CSXという会社が、うちはこうなんですよと説明しているわけではないので、どうしても推測になってしまいますけどね。ただ、もしこういった内容ならば、バックボーンになるところが確立していないので、おそらく、また事故はどうしても起こるのかなと思います。
そして、今回寝室で寝ていた人が骨折で済んだことは、たまたまというよりも、ちょっとした奇跡なのかも知れないな。なんか、そんなことを思いました。
このブログがみなさんの考えるきっかけになれば幸いです。