2019/02/27
こんにちは、よっしーです。神奈川県 大磯町のデリバリー給食に関して、町が給食を作っている製造業者との契約を解除する方向で検討していますといったニュースがでています。
(出典:毎日新聞:https://mainichi.jp/articles/20170930/k00/00m/040/145000c)
保護者の立場としては、この給食を作っている製造業者をとりあえず、とめてほしい…という声が多いんでしょうね。今日は、それについて考えてみたいなと思います。
1 システムを作ることって難しい
町としては、給食をつくっている事業者の契約を切る方向で考えています。とりあえずは給食ストップ!の方向です。
もちろん、給食を求める声って多いんですよ。朝、2時間早起きして、月曜日から金曜日まで、お弁当を用意することって、とくに共働きの家庭とかでは大変です。
僕は千葉なので、中学校だったときは、給食があって、ごくたまに何かのイベントでお弁当が必要になるときはあったのですが、覚えているのがウチのお母さんはお弁当のセンスがなかったことです。
ちょっとしたアルミ箱の平たいお弁当に、なぜかカレーライスだけがドカンと盛ってあったり、冷たいソバだけ入っていて、ツユのパックが上にのっかっていたりして、確認で開けた後、そっと閉じた記憶があります。
そして、友達の前では今日お弁当忘れた…いって、お腹がペコペコなのをごまかしていました。これは、友達のお弁当って上手で、あたり前ですが、食べながら、他の人のお弁当のおかずとかが話題になるわけです。
色とりどりの美味しそうな、卵焼きやちょとしたウインナーです。その中で、お弁当箱の中に、カレーライスの単品が俺はここにいるぜ!と自己主張しているお弁当があったとしたら、あとは言わずもがなで、中学生としては、友達にからかわれるのがすごくいやなんです。
料理は美味しかったけれど、お弁当の見た目は本当にわるかった。これは、お母さんのお弁当に腕がなかったという話ですが、やっぱり、各家庭でどれだけお弁当にポイントを置けるかには、それぞれの家庭環境の差がものすごくでてきます。
うちでいえば、愛情はあったけれど、時間、料理の素材、お母さんの調理と盛り付けの腕などの、お弁当トータルの総合力はひどかった。なので、僕は給食に感謝している中学生でした。
そうでなくても、家庭のそれぞれの状況の中で、お弁当を毎日用意することができない家族というのも当然多いはずなんですね。
システムを作ることって、ゼロから作ることが一番大変で、車輪が転がるまでが一番力をかけなきゃいけない気がします。昭和40年頃から、全国にひろがっていく給食制度のもとで、30年前には、千葉には当たり前に給食がありました。もちろん、温かくておいしい給食です。
今の大磯の保護者の方が中学校だったときには、給食が提供されていました。今、他県では当たり前だと思っている給食システムがあまりないところのメインは、大阪・神奈川です。
逆をいえば、人口が急速に発展したので、給食システムが後回しになっていたというところが強いのですが、制度って、これを立ち上げるところが一番難しいというのがあるんでしょうね。
2 大磯町は給食システムはあきらめてしまうの?
ところで、給食をとめるとしたら、もとのお弁当持参の制度に戻るだけでは…という疑問を持つ人もいるかと思うのですが、基本は他の事業者に変える方向での検討のはずです。
もともと、ここの町長は、大磯町の給食がなかったところから、子どもたちへの給食を実現したいという思いを公約で掲げていましたので、あそらく、まずはこの事業者をとめて他の業者に変えるという方向での検討だと思います。
全体の流れの中では、給食をきっかけに、色々なことを教えられるように頑張っていきましょうという法律もあり、給食システム自体は整えられていくのかなって思っています。
でもね。それはみんなが安心しておいしく食べれる給食があっての話です。ここにはある程度、みなの期待値みたいなものがあって、こういったものを期待している、だけどでてきたもの、これはひどいよね…というものを食べさせているのだとしたら、やっぱり問題なのかなって思います。
3 きみ、この話はなかったことに…できるのか
(1)契約をやめることのリスクを知れ
僕は、大磯町の給食の問題で、一番ポイントとなるところ、ネックになっているところは、給食のデリバリー制度であったり、事業者ではないと思っています。一番大きなところでは、町が自分のところの給食、大磯町の給食というものを、システム(制度)として、どういう風に管理(とくにコントロール)していきたいかだと考えていますが、それは機会があれば、後日説明したいなと思います。
まずは、保護者の立場としては、この給食を作っている製造業者をとりあえず、とめてほしい…という声があるでしょうから、じゃあ、契約って解除できるの?というところについて考えてみたいと思います。
ただし、僕は法科大学院を卒業していますが、法律のプロではないので、あくまでこういう風に考えていますよといった形でとらえて欲しいなと思います。
まず、今のデリバリー給食の、契約期間は3年3ヵ月です。後、1年半は契約期間が残っています。
法律をできるだけ日常用語におきかえて説明したいなって思っていますが、みなさんは、契約のポイントってなんだと思いますか。
もちろん、色々あるんですよ。でも、大磯町の町長が製造業者との契約を解除する方向で検討しているといった場合に、まず、ポイントとなるところは、①契約の解除ができるか。ということと、解除するとして、②町が違約金をいくら支払うことになるのかです。
ん…?!という保護者の声が聞こてきそうです。僕もわかります。給食として、異物は入っている。冷めててまずいという声もあって、なんで子どもにこういうものを食べさせるのってところもあるし、とくに子どもをすぐそばでみていると、すごく腹立たしく思うだろうなというのが想像できます。
ましてや、町が違約金を払うということは、税金から出すということですから、いずれ追い銭として負担することになります。
でもね。ここでまず、知っておくべきこと。重要なことは、契約って、相手を①契約によって拘束(しばる)ことができるということと、②途中でやめる場合には、違約金を払わないといけないというのがポイントです。
みなさんも、携帯電話を買うときとか、2年間契約してくださいね。途中でやめるときには違約金が必要ですって聞いたことがあると思うんです。
これは、会社として、ユーザーがサービスをある程度の期間続けてくれることを前提に、設備投資していたり、携帯電話の端末の値段を負担しているのに、途中でやめられると損をするからです。
先にお金を投資しているのに、途中でやめられる。当然、事前に想定していた計算が合わなくなってくる。会社としては損をしてしまう。だから、契約によって、ある程度の期間しばっているんですね。
そして、途中でやめる場合には、その分の損を違約金という形で払うというのがルールになっています。ここが、やめる方向で検討とはいっても、気にしないといけないことですよね。
(2)プライオリティ。それは契約書から検討するということ
契約を白紙に戻す(契約の解除をする)ことって、民法という法律にルールがのっていますが、まずは、当事者の間で決めた契約書が優先します。
これを特約というのですが、最初に確認することって、まずは、契約書です。携帯電話の場合に、とくに理由を問わずユーザーの判断でやめることができるのは、契約書でその内容が盛り込まれているからです。
まずは、今の契約書だとどうなるの?の検討が、一番重要です。
今回についても、町が事業者との解除を検討するということなら、相談している弁護士に、町としては、どうしたいかを伝えて、今の契約書だとどうなるかを明確にするのが重要かなって思います。
この町としては、どうしたいの?というのは結構重要です。弁護士としては、依頼者がなにを求めているのかがはっきりしないと、契約書の中で重要なことや、戦うべき法律の条文を引っ張ってこれないんですね。
特約、もしくは、六法とか、法律書に書いてある言葉(条文)、あれが、法律家の武器であり、メニューなんですが、それこそ、色々なことが書いています。こういった場合(A)は→こう。こういった場合(B)は→こうと、それこそ、何千個もあるので、
まずは、町はどうしたいのかをはっきりしないと、弁護士の人は、適切な武器メニュー(条文や特約)をひろえなくなってしまいます。ようは、弁護士は法律のプロだけど、依頼者の思いをヒアリングするプロとは限らないので、ポイントがずれたことをしてしまう危険があります。
町としては、箇条書きで、優先順位をつけて、依頼者がなにをしたいのか、日常の用語でぶつける必要があります。
たとえば、
①まずは、契約を解除したい。そして、違約金については、こういった事情もあるので、払いたくない。それが通らなくても減額を求めたい。
もし、契約書からは難しいなら、別途、話し合いをもって、合意で解除する書面を作りたい。違約金については、払いたくないし、最低でも減額を求めたい。
他にも、町としては、事務として問合せの電話が頻繁にかかってきたり、職員に工場を見にいくという事務や費用が発生してるので、なにか請求できないか。少なくとも交渉の材料に使えないかを検討して欲しい。
たぶん、そうすると、弁護士としては、契約書や条文の中で、依頼者の思いをどうかなえていくか検討するはずなんですね。
なので、大磯町の町長が製造業者との契約を解除する方向で検討しているというニュースがながれたとき、僕は、契約書はちゃんとしたものを作っているんだろうか。今の契約書ではどうなるんだろうというのが気になりました。
これは、大磯町は制度の立ち上げ時期なので、なかなかそこまで手が回らないんじゃないかなというのが想像できるからです。
たとえば、契約が解除できるのかについては、相手に通知すれば解除できるのか、それは、何か月前に解除通知すればいいのかという、「催告解除権」の取り決めが書かれているかが気になります。
また、違約金についても、契約書に、どんなことが書かれているか気になります。
とくに、違約金については、考え方によって予想より大きくなる可能性があります。通常、違約金は、損害賠償の額をつど検討したりするのは大変なので、目安をもうけて、それ以上は請求しないとしています(損害賠償の予定:民法第420条第3項)
ただ、これも、契約書次第で、「違約金の額を超える損害が発生したときは、その超過額を請求することができる」と書かれていたりすると、食品製造業者が、いやこれだけかかったんだという証明が通れば、賠償額にのってきますので、そのリスク検討も必要になります。
たとえば、今回の給食提供にあたって、綾瀬工場などの新たな工場を設置するときに生じたお金や、コンベアラインなど導入した機械、また、人を雇わないと給食がつくれませんよね。新たに雇った人などのコストも検討に入ってきたりします。
なので、今回も、契約の主体がよくわからないのですが(教育委員会だとは考えています)、町と、給食の製造業者との契約の中で、解除する場合の取り決めがあるのかどうかが、また、そのときの違約金はどうなっているのかが検討の第一段階になります。
(3)奇妙な昼食を提供する執事と、惑わされている主
そうはいっても、みなさんは、思いませんか。それはきちんとしたサービスが提供できていることが前提なんじゃないの?って。
今回、冷めていておいしくない…というよりは、ニュースによってはマズすぎるというタイトルまで頂いて、給食がたくさん残されている写真が報道されるわけです。
他にも、髪の毛や虫が入っていた、ビニールや、プラスチックの一部と思われるものが入っていて、自分の子どもに食べさせるものとして、どんな工程で作っているんだという不安がでてくるわけです。
子どもは、食べ盛りだから、おそらくお腹を空かせて我慢している。親としては、ちょっとしたものでいいから、きちんとしたものを食べさせて勉強や部活に頑張って欲しい。
昨今、報道を受けて、暫定対処でしょうが、お弁当を持ってきてもいいことになりました。数字でもでています。給食35%、お弁当65%の割合です。持ってきていいと書くと、言葉として選択できるようになったというニュアンスがあったりするのですが、選択ができているわけではないですよね。むしろ、やむを得ずです。
みんなで一緒に同じものを食べる。もちろん、アレルギーなどには配慮する。家庭によってはお弁当格差もあるし、共働きなどでお弁当に満足な時間をさくことができないところもあるけど、子どもはまだ身体が未成熟なところがあるから、栄養バランスを考えて、安くていいものを与える。
食べ盛りだし、2時間目には給食のことを考えてそわそわしてもらい、安心しておいしく食べてもらいたい。私たちの地域で、子どもたちを育てていくんだというのが、給食の意味だと思うんです。
じゃあ、2時間目には子どもが給食のことを考えてそわそわするようなものができているのかといったら、まず、違うでしょうね。むしろ、親の方が24時間そわそわしている状況です。
地域で子どもたちを育てていくんだと考えたときには、給食も、ある程度のクオリティが当然必要です。システムの立ち上げのときだから、難しいところはあるけれど、そのときの環境で少しずつよくしていく。そのために、みなが考える。
少なくとも、子どもたちに等しく変な給食を提供することがないように、地域みなが協力していく。それが必要になるはずです。でも、実際、ちゃんとしたものがでてきていない。
契約書に書いてなかったとしても、こちらはお金を払っている、だけれども、あちらからはあまりにも変なものが出てくる。このお互いが提供しているもののバランス差で、契約をやめることにできないのって思いますよね。
3 契約書になにも書いてなかったら、食品事業者の契約って解除できるの?
(1)ちょっと「変な執事」というレベルでは変えられない。
では、契約書になにも書いてなかったときに、この奇妙な給食を提供する執事を変えることはできるでしょうか。これは、まず大きなところから結論をいいますね。
基本は、難しいです。しかも、相当難しいはずです。でも、まずは、ポイントなることをいいたいと思います。
まず、確認したいのは、ここでいっていることって、町と給食事業者との間の話です。携帯電話もそうですが、当事者でもないのに第三者が勝手に解約できません。法律では、誰と誰の契約なのかって、結構重要で、ここでは、町の教育委員会と給食の調理をまかされている事業者とのお話です。子どもや保護者が契約解除にかかわることはできません。
では、町から見て、この事業者を解約したいと思ったとき、まず、考えないといけないことは2つです。
それは、給食事業者から、①きちんとした給食が提供されていなくて、②それは、給食事業者が悪いよね。ということが言えないといけません。法律用語でいえば①、給食事業者に債務不履行があり、②そのことについて過失が認められるかになります。
今回は、本当に①きちんとした給食ができていないし、それは②作っている業者が悪いよねって、すごくいいずらいんです。仮にそれを言うなら、弁護士にこれが必要です(ポンポンポンといって腕をたたく)。
もちろん、保護者からすれば、ここはすごく言いたいことがあるはずです。きちんとしたものなんか提供できていないじゃないと。
たしかにその通りなんです。でも、法律をあまり勉強したことがない人は、大きな話として、これを先に知っておいてください。法律学って、反対利益にものすごく配慮する考え方なんです。そこだけ見ると、ひどい話でも、全体の利益をはかりにかけて考えていることって多いんですね。
ここではなにかというと…給食を提供している会社にも、働いている従業員やその家族がいるということですよ。働いて、いくらかのお金をもってなんとか家族を養っている人がいるということです。
一般に、会社に問題があるというときには、イメージしにくいですが、会社にはとうぜん名もなき従業員がいます。そこで、会社の方向を決定できる(幹部)と、そうでない社員やパートの人、組織論として、たとえ一般的にはおかしくても、ベースは権限がないので、どうしようもできない人たちがたくさんいます。
でも、そこに生活の基盤があるわけです。お給料のことですが、社員やパートとしては、明日から会社がなくなったら、どうしよう…という不安でいるわけです。
だからこそ、先日の食品業者の幹部が保護者に出した文書で、「他の自治体の中学校給食のように選択制であれば、食べたくなければ注文しなければいいで済んだ話だったのですが、半ば強制的に始まった全員給食ですので」とか、
「当然給食開始当初から反対派の声も多く、一年半経った今、反対派からのリークによってこのような騒ぎになってしまいました」というような行為って、給食事業者の、社内の社員やパートからみても、ものすごく、戦々恐々としているわけです。何言ってくれているの。明日から食べていけなくなったらどうしてくれるのって。
僕も、通信事業者の社員だったのですが、ようは大手3社しかないわけです。全体としては、いいサービスだと思うのですが、コールセンターとかでは、ユーザーから、結構いい指摘を受けます。
「いやなら、やめてもらってもいいですよ」は絶対に言ってはいけないと教育を受けています。それはね。バックに公共性という側面があるし、サービスという意味からも発展していかないからです。通信という人のコミュニケーションにかかわるところで、参入できるところも少ない。
その中で、必ずしもユーザーが選べているわけではないし、サービスを提供する側としても、やっぱりよくしたいという思いがあるわけです。
デリバリー給食も、当然、地域で子どもたちを育てるという観点から、中学生の子どもたちやその保護者に大きくかかわっているわけです。
公募で、うちならきちんとしたものを提供できますよ。まかせてくださいといって参加しているんだから、「半ば強制的に」とか、「食べたくなければ注文しなくていい」という言葉には合わないんですね。
その意味をいじわるく取られたら…ならば、(給食という公共性あるところからは手を引いて)民間の仕出し弁当業者として、「食べたくなければ注文しなくていい」というスタイルでやっていくんですねという質問をまねくことになります。
これは、同じ社内の人から見ても、明日工場に出社したら、入口に閉鎖予定との貼り紙が貼られていたらどうしようって不安につながってくるわけです。みんなそれぞれの生活があります。
みなさんが、会社のサラリーマンだったとして、ほとんどの人は、裁量や権限がない人だと思うんですね。むしろ、しばられているといっていいぐらいです。会社というものを動かして、ものごとを決定できる人と、その従業員とは違うし、家族やそれぞれの生活が当然あります。
ようは、法律事項って、裁判所が当事者の間にスパッと入ってきて、たくさんの生活に影響を及ぼすので、結構判断が慎重というのが前提にありますよというのは知っておいてください。バランスとは何かが背景にあります。
(2)執事が変なのは主のせい?
もうひとつ、目では一見わかりにくいけど、ここの給食が本当に問題となっているところって、別にあります。たしかに、執事も変なんですよ。でも、大きなところでは、問題はそこではないです。
でも、わかりにくいですよね。説明します。
ます、今、一度これを確認しておきましょうか。「デリバリー給食と仕出し弁当の違い」です。似ているけれど、違うんですよ。そして、わかりにくいけれど、重要です。
デリバリー給食は、つくっているところがどこであれ、「大磯町の給食」です。材料も献立も、調理方法も基本は、大磯町の調理士が指示を出しています。こういった材料で、こういう風につくってねと。
給食を冷たくすることも、抵抗力の弱い子どもに、集団で食中毒をださせないための指示があります。大磯町の給食調理マニュアルです。
大磯町の中学校は給食センターを持っていません。だから、調理の部分だけ(配送もですが)、設備をもっている会社に切り出しています。メインは大磯町の給食で、大磯町がコントロールできます。
ただし、自分で調理できないから、そこをデリバリー業者が代わりに行っています。
大磯町のランチボックスの形だけみると、仕出し弁当みたいですよね。かりに、そこの食品事業者に予算の範囲内で自由に作っていいとしたら、温かくてそこそこのものを出してくるはずなんですが、逆にいえば、大磯町の指示という枠組みの中で作っているから、「冷たくて・まずいんです」。
もちろん、コスト、栄養バランス、安全性を強調するのはものすごく重要です。でも、冷たくて、まずい理由のメインはどこにあるのと普通に考えたら、まずは、大磯町の献立から考えないといけません。その次に、ちゃんと指示通りに作ったんだよね…のチェックです。
そういった意味で、契約って解除できるのと考えていくと、①きちんとした給食が提供されていないのは、②給食事業者が悪いからとはいいにくそうです。
とくに、この①番の、きちんとした給食が提供されていないっていうのは、言葉の幅があるかと思いますが、「冷たくて、まずい」といった方向で、検討すると、なかなか通りません。
なぜかといえば、判断するのは当事者でない裁判官(裁判所)だからです。給食の味や温度は、人によって考え方や好みがわかれます。判断のモノサシが人によって違うから、ここから下の味付けは、これは契約本来が求めているきちんとしたできじゃないよねって。違反しているよねって、すごくいいずらいです。
だれが見ても、この給食は腐っているというような、モノサシが人によってばらつかないようなところでないと、違法(社会通念上、妥当じゃないよね)とは裁判官に認めてもらえません。
とくに味については、僕もニュースで見るだけだとわかりません。もちろん、状況からすれば、相当おいしくないんだろうなというのは想像できますよ。
でも、味って見ているだけでは、わからないんです。実際に食べている人(大磯町の関係者)からすれば、ものすごく言いたいことがあると思います。それはいいたいことあるよねと思っています。
でもね、実際に裁判官にたべてもらうのは難しいし、さらに、この味付けは違法だ!と認めさせることは、考えるだけでも難しいですよね。第三者に冷たくてまずいということを、誰がみてもよくないよねと説得するのはやはり難問です。
しかも、成長期に必要な食べものや、栄養のバランスから、大磯町が指示してコントロールしているとあれば、②給食事業者が悪いと、裁判官を説得することは…むずかしいですよね。おたくが委託指示をだして、(給食事業者は)その通りに作っているんじゃないのって言われてしまいます。
ここって、法律と、一般人と感覚にずれがあるんじゃないのと思う人の方が多いんだろうなと思っていますが、バックにあるのは、全体的なバランスです。給食が美味しくないという理由で、契約がなかったこと(白紙)に戻ると、その会社の従業員やその家族が路頭に迷う可能性があるといったバランスが背後に隠れているからです。
(3)執事を変えている主もいるようだけど
でも、給食事業者が変わったところもあるよねという人もいると思います。埼玉県春日部市の給食がそうなのですが、業務開始から2カ月で、契約を切っています。ここはなぜ契約を解除できたのでしょうか。内容を埼玉新聞から引用します。
それは、「きちんとした給食」というものを委託でお願いした「指示を守っていない」ということで説明できたからです。
ちょっと見て下さい。5校のうち複数の学校で、給食開始時間までに調理が間に合わなかったとあります。給食時間までに持ってきてくださいねとの指示に対して、最大1時間半遅れてみたとか。
他にも、エビチリをお願いすれば、明らかにコゲコゲの部分がたくさん目でみて判断できるわけです。「お願いした部分に、ちゃんと対応ができていない」。その理由は、人手不足というのがあったのですが、業者側で必要な人を確保できていないという問題があったわけです。
①お願いした委託の指示守ってないよね。②人の手配がネックになっているので、②(問題解決の)ボールを持っているのはこっちじゃないよねというところがあるので、
ある程度認めてもらいやすいんです。時間が守れていないということと、見た目がおかしいので。その理由も相手側に原因がありますよと。
あと、補足ですが、言っても改善されなかったというのも、契約を解除できるかにかかってきます(民法541条)。
なので、もし、大磯町の教育委員会が契約を解除したいと検討するときには、解約について、契約書に書いていない場合は、味の部分を取り上げるのではなくて、「指示したことを守っていない」というところを、弁護士がひろって、主張していくことになるのかなと思っています。
たとえば、運営管理について、給食事業を提供するにあたって、問題が発生したときには、必ず、いついつまでに、こういった報告を教育委員会にする義務がある。だけれど、それを行わず、相手側に問題があったというところをもし言えるのなら、きみは執事にふさわしくないといって、契約を解除することもできるんでしょうね。
ただ、一般的に報道がされている中で、ぱっと、町が給食を作っている製造業者との契約を解除する方向で検討していますと流れてていても、それって本当にできるのかなって一般的には難しそうだけど…て感じています。
横浜市では、同じ食品事業者の契約を見直したみたいですけどね。こちらは決定で、10月16日から別の事業者に変更するということがアナウンスされています。毎日新聞から引用します。
ただし、横浜市と大磯町では、契約書の内容とか、教育委員会と業者のやり取り状況とかが異なるはずです。異物混入にしても、言ってから、今年度改善しているというところを考えてみても、業者がわるいのって、法律上でいえるかは、結構微妙な気がします。
本当なら、町がどうしたいというのを弁護士に見せて、今の契約書からしたら、こうなりますよという見通しとリスクについて、検討してもらうはずなんですよ。法律上は契約期間は守らないといけないし、当事者はそれに拘束されますよというのが原則ですから。
先に、報道に「町が給食を作っている製造業者との契約を解除する方向で検討している」と書かれているけど、これって、議会に報告がされているんだろうか?という疑問がでてきます。
業者変更って、契約と、お金と、相手が言うことをきいてくれないといった、3つの部分からできているからです。
ここについては、報道がされていないのでわからないけれども、横浜市は、たぶん、教育委員会がポイントをよく理解しているはずなんです。
大磯町の給食の報道をみた上で、これは問題だと捉えて、法律的な内容を自分のところの組織で検討させた上で、じゃあ、どうするのってことを決定しています。まずは、他の事業者に変えますよって。
少なくとも、契約だとどうなるかがわかった上で、細かいところに対応できています。
大磯町ではどうなんでしょう。町から議会に、契約だとどうなるかということは報告されているのかな。お金の支出はどういう風になるか見えているのかな。相手が委託指示違反をしているってことまで言えそうなのかなって、ニュースを見ていると疑問がでてきます。
ニュースでは何もでてきていないので、全くわからないけれど、検討しているという言葉だけがでてきている状況で、難しいんだろうなとは思います。もちろん、報道もなにもないので、わからないですけどね。
(4)執事がごはんに髪の毛とかを入れて困っている
保護者の中には、たぶん、異物混入についての法律の考え方ってどうなのって気になる人もいるかと思います。不法行為責任(民法709条等)ですが、その場合は、実際に、体調不良などの健康被害(など)が発生していないと、責任追及ができません。
保護者からみれば、髪の毛や虫などが入ったお弁当は、もちろん嬉しくないんですよ。でも、健康被害の「おそれ」とか「可能性」だけではだめで、まずは「現実に」被害を被っているといった状況が必要です。
そして、健康被害がでたのは、他の理由でなくて、異物混入が原因ですといえないといけません。なので、かりに健康被害があったとしても、異物混入のルートがわからないと難しいです。
異物は、この食品事業者の製造の過程で入りました。そのお弁当を食べたら、お腹をこわしましたといったように、ある程度、原因と結果を一本線で説明できないといけないはずです。
もちろん、今回の給食って、事業者のところで、すべて作っていてお弁当を密閉して配送しているので、子どものいたずらとか、本当にイレギュラーな場合以外は、あまり、混入しにくいのかなって思います。
でも、基本ルールとしては、混入ルートがわからないとあまり、業者にいえることってないのかなって気がします。
あと、それとは別に、製造物責任法(PL法)というのがありますが、給食にプラスチックとか鋭い金属のかけらみたいなものが入っていて、子どもが口の中をケガしたような場合は、製造上の欠陥があるということで、保護者が直接、病院代とかの損害賠償を求めることはできるようです。
この場合は、無過失責任なので、業者が悪いということを言えなくてもよさそうなのですが、細かいところについては、ちょっとわかりません。
ただ、いずれにしても、執事の悪さのせいで、口の中をケガしたり、体調不良となるような、何らかの健康被害などが発生していることが必要です。
4 このレシピで馳走をつくれ。手段はとわぬ
もちろん、僕は、法律のプロとしての内容ではないので、あくまでも、こうなのかなって自分の思っていることを書いていますが、ただ、みなさん。なんとなく思いませんか?
本当に、問題のネックになっているところって、調理している事業者がわるいのでしょうか。もしくは、デリバリー給食という制度がいけないのでしょうか。事業者を変えたら、大磯町の子どもたちは給食を楽しみにしてくれるのでしょうか。
これって、すごく目にみえにくいところですが、このデリバリー制度や、事業者がかかわるところって、本当は問題のメインではありません。もちろん、デメリットとして、この2つはかかわってくるんですけどね。とくに異物混入の部分は、業者側に問題があると推測できます。
でも、本当にネックになっているところ、「冷たくておいしくない」という部分については、自分たちの給食の品質のコントロールです。大磯町が自分のところの給食の品質を(温かくて、おいしく、安全な給食に)を提供できるのかなって考えないといけません。
自校方式、センター方式、親子方式、デリバリー方式、手段はなんでもいいんです。どの制度をとるにしても、結局は、どういう風に管理すれば、温かくて、おいしくて、安全ということをクリアできるかひとつずつ検討することが必要になってきます。
給食って、給食を通じて、そこの地域で子どもたちを育てていくということですが、安心しておいしく食べれる一定のレベルのものをださないとこういう問題が発生するわけです。
大磯町が、きちんとした給食をだそうと考えた場合に、自分で給食センターを持っていたら、それはある程度コントロールができますよね。温度や味、なにか問題があったときも、自分のところで動かしているものであったら、すぐに調整ができます。
でも、これは中長期的な視点ですよね。神奈川県では、人口の発展が急だったので、給食の制度は優先順位としては、後回しにされていました。これは、他県と認識が違うところです。他県では昭和40年頃から、全国に給食を制度として導入拡大する流れの中で、給食が整備されてきました。
たとえば、僕がいる千葉県では、それこそ、今の大磯町の保護者が中学生だった30年以上も前から、温かくておいしい給食の提供が当たり前でした。大体は、50年程かけてシステムが作られている現状があるし、日本全体をみると、給食は好きだったという思い出がある人が多いのかなって思います。
でもね。神奈川県はこれから制度を作らなくてはいけません。やっぱり、立ち上げは一番大変です。コストから言っても、すぐ、自校方式にはなかなかしにくいかもしれません。
でもね。デリバリー給食のように、それを他人にやらせようと思った場合、やはり、そこには工夫が必要です。
まずは、調理師の献立って、どうですか。自分が考えた料理がおいしくないと報道されて色々悩んでいると思いますが、経験豊かな調理師ですか。町としては、調理師を、現場を見に行かせて、色々な経験をさせて、全国的な給食の知恵を共有してバックアップしていますか。
まずは、町がこういった風に給食を作って欲しいという依頼内容も重要だと思います。献立の中身ですよね。だって、それに基づいて、給食業者が給食を作るんですから。主の命令(委託内容)がきちんとしていないと、執事はおかしなものをつくりだします。
お弁当が冷たいのは、ある意味普通です。温かくできるならそれが一番いいですが、まずは、スープカレーや、椀物であたたかくしなさいよというのは、いい内容だなと思います。
でも、レシピが一緒なら、給食業者が変わっても、基本は一緒です。どの執事につくらせるとしても、冷たくておいしくないものができてしまうので、本当に調理をお願いしている部分のレシピが他の調理師から見ても、大丈夫かなっていうのは気になります。町から、ちゃんとバックアップしてもらっているかなって。
そもそも、主(あるじ)の依頼は大丈夫なのって。
そして、デリバリー給食の場合、(調理とかを)まかせてもいいんだろうけど、できたものの料理って、結構重要な部分なので、なにかあったときにコントロールができないといけません。
執事にまかせて終わりとか、公募で選んで終わりではないです。システムを運用するにあたって、つねに、主(大磯町)がチェックして、口をはさめる余地が必要なんだろうなと思います。そうでないと変な執事が、料理をまずくつくったり、髪の毛を入れたときに、すぐに代えたり、対応することができません。
もちろん、大磯邸の主が、自ら結局給食センターをもって、調理するにしても、執事を選んで、(調理だけ)は他人にまかせるとしても、他人にまかせるときは、やっぱり難しいところがでてきます。
主から「このレシピを見て、給食をつくりたまえ」といった言葉の後に、執事が「かしこまりました。ご主人様」といい、給食時に、執事があらわるわけです。
ランチボックスの蓋をあけてみたら、こぞって、冷たくまずい料理をだしてくるわけです。なかには、髪の毛まで入れてくるわけです。
主としては「うぬぬぬ…」というところですが、もちろん、髪の毛に関しては、まず、原因は執事ですよね。なぜ、チェックしないのかとおこらないといけません。でも、そこも本当は連携です。100%防止は難しいので、今後、わしもチェックするし、執事もチェックする。少なくとも、どうやって情報共有をはかるかはやり方を考えるです。
でもね。冷たくてまずいというところについては、僕はメインは主の工夫なんじゃないかなって思っています。「きみ、このレシピで給食をつくりたまえよ」だからです。
ボールは自分のところにあるし、どうしても、そのレシピが気になります。ここは僕にはわかりません。でも、変な執事がかわったとしても、そこって結局どうなるんだろうは気になります。
給食システムって、あたり前に見えて結構当たり前ではありません。日本の給食システムって、海外からすごいとの評価があったりするのですが、それは、日本全体では、50年間以上、給食システムを積み重ねてきたという蓄積があるからです。
一方で、大阪府、神奈川県は生みの苦しみの最中にいます。もちろん、大変です。給食システムって簡単に見えて、簡単じゃありません。みなが給食システムについて知り、ポイントがどこにあるか考えた上で、知恵を重ねて協力していかないといけないのかなって、ニュースを見ながら思いました。
このブログがみなさんの考えるきっかけになると幸いです。